海の向こうで、書く書く然然

海外から見た日本、日本から見た海外 ー 2つの視点からのつぶやき

豪州でウォシュレットが出回らない理由

 今日は私のオーストラリア生活における歴史的な日だ。とうとうこの日が来た。

 

 我が家にウォシュレットが設置されたのです!!

 

 本来なら、5月19日が歴史的な日になるはずだったのに、オージー特有の手法?で延期続出。この日にウォシュレット設置の壮絶なストーリーを書こうと意気込んでいただけに、悲しくなって代わりに豪州ダイソーの記事を書いたっけ。

 

monamona-aus.hatenablog.com

 

 まぁいいや。めでたい日だし、ウォシュレットの話に専念しよう。日本では家庭や学校、商業施設、はたまた公衆便所まで設置されているウォシュレットですが、ここオーストラリアにはほとんどない。目にするのは非常に稀。

 かつてはウォシュレットの存在を知っていても懐疑的だったオージー夫は、3年間の日本の生活ですっかり気に入ってしまった。冬でも便座は適度にホカホカだし、日本でウォシュレット付きのトイレが心地良いと知ってからはトイレの長居も増えた。携帯片手にいっちゃったりしてさっ。

 我々は日本滞在中の21年1月にこのゴールドコーストの住処を遠隔で購入し、オージー夫は帰国後の同年10月、私はコロナや仕事のおかげでやや遅れてことし3月から住み始めた。私は日本にいる時から「新居には絶対にウォシュレットが欲しいっ!」と訴え続けたし、日本で重宝していたオージー夫もひとつ返事で賛成してくれた。

 義理父は、「たぶん必要であろう」と先回りして考えて下さり、我々の不在期間に専門家を呼んでトイレの壁にコンセントを設置してくれた。その優しさに頭が下がる思いだったが、その頃はウォシュレットの設置が異常な程に大変なものだと知る由もなかった。

 

 オーストラリアに帰国してすぐに私のウォシュレット設置への血と汗の努力が始まった。

 家のすぐ近くに「The Bidet Shop」というお店があったので行ってみたら、販売している製品はすべて韓国製。お店の人によると、「韓国製もいいよ。今日家に持ち返って、自分で簡単につけられるよ」だって。「今日持ち帰る」って。ほんまかいな?

 日本人ですから、やっぱり「TOTO」や「Inax」、「Panasonic」といった日本のブランドがいい!ネットで調べると、そんな遠くない場所に日本のブランドを扱っているお店があることが分かり、すぐに行った。店に入ると真面目そうな店員さんが出てきた。顔をやや曇らせながら「TOTOなら販売できる」と言い、「オーストラリアでウォシュレットの設置は難しいんだ。便器のサイズもしかりだし、一番大事なのは給水口の位置だ。給水口がトイレの左側にないと無理だ」と続けた。話を聞いていても、「Hello?」状態で今一つピンと来ない。ちなみに一番シンプルなTOTOの便座は1500豪ドル(約13万7000円)。

 早速家に帰って、その給水口を探すが、ない。日本は壁などに付いているが、ないない、ない、ない。オージー夫と二人でどこだどこだと探すと、あった。トイレのタンクの中に隠れてしまっているのだ。あああ、なんじゃこれは。

こんなところに給水口が隠れていた~。汚い写真でごめんなさい。

 オーストラリアのトイレは、見た目重視でパイプやらバルブやらが全部隠れてしまっているのだ。

オージートイレは見た目重視で、裏のパイプやらはすべて隠れてしまっている

 そこでお店に再度コンタクトして事情を話すと、「設置は厳しいだろう。配管工に相談するべきだ」とのこと。「諦めよっか」とオージー夫の考えが少しずつ変わり始めた。えーっ。「配管工に相談しよーよ」と私も引き下がらない。

 オージー夫は渋々と配管工を呼んだが、配管工のおじちゃんも開口一番に「こりゃ、辞めた方がいいよ」って。なぬ~っ。設置を検討しているのは、2つのトイレのうち、我らのベッドルームの奥に隣接されたシャワールームの中にあるトイレだ。配管工のおじちゃんはシャワーを指して私に、「すぐ隣にシャワーあるから、用を足したらお尻をシャワーで洗えばいいじゃん。ワハハハッ」って。なんだそれっ!商売っ気がないったらありゃしない。

 オージー夫はこれを聞いて「ウォシュレットを諦めよう」と降参だ。それでも私は配管工のおじちゃんに、「何とか設置できる方法を考えて下さい」と食い下がった。そしたら「タイル張りの壁をぶち抜いてパイプを探し、パイプの配置を変えた後に壁にウォシュレット用の給水口を作れば、何とか使えるようになるかも。でも難しい。辞めた方がいい」との答え。本当に難しそうだ。

 それにしても、なんだ、先述の「The Bidet Shop」の説明は。「今日家に持ち返ってすぐに使える」なんて適当なこと言って、詐欺まがいもいいところだよっ。やっぱり日本の製品を扱うお店は、真実重視で顧客に対応してくれるとも感じた次第だった。

 その夜、夫婦会議を開き、オージー夫を説得して、見積もりだけはまず取ろうということになった。配管工のおじちゃんから届いた見積もりは1700豪ドル(約15万5000円)。ぎゃーっ。オージー夫は見積もりを見て、完全に設置案から撤退してしまった。「えー、日本でもその良さを実感していたじゃん」と諭しても、びくともしない。が~ん。こうなったら仕方ない、最後の切り札を使おう。「私のお小遣いから全額払うので設置したい!」で会議は閉幕。私のウォシュレットへの情熱は揺るぎないのだ。ここまでが3月末~4月頭のお話だ。

 まずウォシュレット本体を取り寄せたが、イースターホリデーを挟んだがために到着までに2週間以上かかった。本体入手後、配管工のおじちゃんに連絡を入れて予約を取るが、これも3週間後と伸び伸び。コロナで病んだ社会が回復し、人々が元気出し始めて他人を家に呼んだり、家の修繕を始めたから、配管工のおじちゃん今人気者なんだって。

 5月18日、待ちに待った配管工のおじちゃんをお迎えする日が来た。若手連れて2人で朝7時に登場した。朝早起きしてお迎えしたので眠たくて仕方なく、壁をドリルでぶち抜く音で頭がシェイクされる気分だ。ドリルの音はうるさいけど、ウォシュレットを手にするためには我慢だ。

タイル何枚かをぶち抜き、パイプを発見

 工事は5月18~19日の2日間にわたって行われると聞いたが、配管工のおじちゃん、上記の写真の状態で1日目を終了して「また明日~」って言いながら後にしたのに、電話を入れてきて「明日じゃなくて、5日後の来週月曜日に」だって。なぬ~っ。幸い我が家はトイレが2つあるのでまぁ大丈夫だけど、夢のウォシュレット入手がさらに5日ずれ込んでしまった。

 その5月23日の月曜日、この日こそ、ウォシュレットと思いきや、オリジナルのタイルの色に近いタイルが品切れと。あのさぁ、見積もりにも来たし、5月18日のドリル工事の日もタイル見て、すぐに在庫調べられたでしょうに、って。期待持たせて、またどさーっと落とされた気分。なんかウォータープルーフのペイントをしないといけないとかで、空洞のエリアに青いの塗って帰っていったわ。

 5月24日に朝7時に、配管工から予告もなく、「タイルを入手した、今マンションの下にいる」と電話が。前夜仕事で遅かったオージー夫はまだスヤスヤ寝ているのに!!怒りも我慢も沸点に達しましたが、にこやかにお迎え&対応。やはりこの日もタイルをはめ込んだだけで帰っていった。ったくもう。話によるとタイルはタイル屋を何軒か回って近い色を探したけど、見つからなかったって。極めて穏やかなオージー夫には、「これで我慢しなさい」と諭されましたっけ。

タイルの色がビミョーに違うよーぉ

 5月27日に「今からいく」と再度連絡が入った。いよいよか、と思いきや「今日はタイルの隙間を埋める工程だけで、トイレ設置はまだ先」と。小出しばかりして、2日で終わるっていう当初の話と全然違うじゃんかっ。

配管工は、新しいタイルの隙間をシリコンで埋めて30分で帰っていちゃった。

 そして5月30日の本日、配管工のおじちゃんが配管を終え、シリコンでトイレを固定して完成させました。やった~!感涙もの~!

ついに手にした、マイウォシュレット!

 だけど、配管工のおじちゃんが帰り際に真顔で、「今日は使えないよ。トイレを固定したシリコンが乾く明日まで使うのは待ってくれ」と言い残して去っていった。最後の最後まで、どさーっと落とすんだよね、ちみは。まぁ、もういい、もういい。

 使えるのは明日からだけど、設置工事は完了だから、今日が記念日としよう!

 

 2カ月半、30万円近くをつぎ込んでようやく念願のマイウォシュレットを手に入れたんだけど、私、明日の夕刻のフライトでオーストラリア発って、しばらく日本に滞在するのよ。いったい何なのよ、このタイミング・・・。こんだけ苦労し、待たされたのに、マイウォシュレットを24時間も使えないなんて!明日絶対にウォシュレットをエンジョイしてやる~。これからしばらく愛用するのはオージー夫なんかな~。

 オーストラリアでのウォシュレットの設置は想像以上に難しかったし、自身の経験を経て、この国におけるウォシュレット普及率の低い理由がよ~く分かった気がする。値段もさながらインテリアデザイン重視の国だけにそれを打破する複雑な工程が必要となり、私のような確固たる信念で設置を希望する人以外は皆ひるんで断念するのは当たり前だわ。これじゃ、日本の各メーカーもこの国に販売ルートを確立するのは難しいよね。

 オージー夫もしかり、オージー達はウォシュレットを使ったら気に入るだろうなと思うので、新築物件にはこういったことを考慮した配管などをして欲しいなぁと思ったりしました。この国には、まだウォシュレットの素晴らしさを知らない人が多いだけなのよね、きっと。

 

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